サイエンスカフェ in 松江

サイエンスカフェ in 松江

日時2014/11/8
場所カラコロ工房
対象公開イベント
担当者浅岡、大久保、沖中、舘洞、三戸、長田、西原、宮内、村仲

概要

毎年恒例となりました「サイエンスカフェin松江」も今年で10回となりました。今回のサイエンスカフェでは弊法人から4つのトークを、共催する島根県立松江北高校の理数科2年生から2つの課題研究の中間発表を行いました。

トーク1. 宇宙に行くとは? ~ロケットの仕組み~

(スピーカー: 長田 大輝, 北海道大学総合教育部1年)

地上から宇宙までの距離はおよそ100km。水平に100km進むのはたいしたことではないですが、重力に対抗して垂直に100km進むのはすごく大変なことです。飛行機も重力に対抗して空を飛んでいますが、飛行機で宇宙に行くことはできません。その理由をロケットと飛行機のエンジンの仕組みの違いを紹介することで説明しました。飛行機のエンジンは空気がある所でしか使えず、ロケットのエンジンは空気がなくても使える仕組みになっているという長田のトークに、参加者のみなさんは興味津々という様子で聞き入っていました。

長田トーク
長田トーク
(記:西原)

トーク2. 工学の0時間目 ~使いやすいモノとは?~

(スピーカー: 村仲 渉, 信州大学大学院理工学系研究科 修士2年)

工学の0時間目として、難しい工学の話ではなくその前段階として「ユニバーサルデザイン」の観点から私たちの身の周りにあるものについてトークしました。ユニバーサルデザインとは、誰にでも利用できるように物をデザインすることです。ユニバーサルデザインでは、「直観」と「慣れ」がキーワードになっています。この2つのキーワードを配慮したデザインが求められます。「直観」を配慮したデザインでは、五感を使って分かることが求められます。例として、エレベーターの開閉ボタンの改善の経緯について説明しました。見ただけでどちらか分かるデザインからそのデザインにひらがなで「ひらく」「とじる」と書かれているものに変わっているという説明を聞いて納得している参加者が多かったです。また、幼児の誤飲防止のために苦味をつけたものがあることを説明しました。苦みの成分が、世界の中でも一番苦い、ギネスにも認定されたものを薄めたものだと聞いて参加者の皆さんは驚いていました。

ユニバーサルデザインの原則
ユニバーサルデザインの原則

「慣れ」に配慮したデザインでは、従来の使用者が以前と同じ感覚で使用できることが求められます。例としてパソコンのOSの過去のバージョン、現行のバージョン、最新の試用版との比較とキーボードを提示しました。過去のバージョンと現行のバージョンの表示にはかなり差があり、電源ボタンがどこにあるのか最初は分からず苦労したという発言に同感した人が多く見受けられました。キーボードに関しても様々な種類の画像を提示したため、知らないキーボードが出てきて皆さん興味を持っていました。 質疑応答では、工学系に進むと自然にこのような思考になるのかどうかという質問があり、授業でこのような講義があり、それを受けてかよく考えるようになったと回答しました。

(記: 大久保)

トーク3. 塩素臭無くしぇる貝

(スピーカー: 島根県立松江北高等学校理数科2年 化学2班の皆さん(石川香林さん、今岡遼さん、小笠原朋華さん、児島海さん、中村華子さん、深田雄偉さん、森脇航大さん))

宍道湖で取れる貝の殻を有効活用する方法として、化学的反応を利用して塩素臭を除去する研究について発表されました。化学式や専門用語が多く、難しかったという感想を抱いた参加者も多かったようです。効果的なプレゼンテーションを含めて、これからも試行錯誤しながら研究を進めていって欲しいです。

化学2班の皆さんによるトーク
化学2班の皆さんによるトーク
(記: 舘洞)

トーク4. 固有振動数の解析について

(スピーカー: 島根県立松江北高等学校理数科2年 物理2班の皆さん(川上拓朗さん、小西智明さん、坂本充優さん、中川創平さん、山根成陽さん、湯村太一さん))

東日本大震災で問題になった、「共振」による高層ビルの揺れの問題にフォーカスを当てた研究について発表されました。まず音の共鳴を取り上げて、参加者に体感してもらい、次に共振を測定する実験装置について説明されました。今回の発表を通じて感じたことや得たものを、今後の研究の参考にして欲しいと思いました。

物理2班の皆さんによるトーク
物理2班の皆さんによるトーク
(記: 舘洞)

トーク5. 人間と機械語の架け橋

(スピーカー: 浅岡 宏光, 名古屋工業大学大学院工学研究科 修士2年)

人間と機械の対話。アナログ信号とデジタル信号について丁寧に分かりやすくトークが行われました。はじめに、虹色は何色?という問題が出されました。虹という身近な例を用いたことで、来場者にも考えやすく積極的に聞いていました。

サイエンスカフェの様子
サイエンスカフェの様子

その後も、アナログ信号とデジタル信号について図や例を使って参加者にも分かりやすいようにトークが行われました。参加者の皆さんは、時折お菓子や飲み物を召しあがるなど、リラックスした雰囲気でトークを聞いていました。

(記: 宮内)

トーク6. 松江の夕焼けから、宇宙の夕焼けまで ~光のいろいろな性質~

(スピーカー: 三戸 洋之, 東京大学木曽観測所)

今回のサイエンスカフェの会場となったカラコロ工房の近くには宍道湖という大きな湖があり、そこから見る真っ赤な夕日は絶景で観光名所となっています。光は波長によって色が違い、太陽光や白色光は波長の短い青い光や波長の長い赤い光など様々な色の光によって構成されています。波長の短い青い光は、赤い光よりも大気中の分子にぶつかりやすく、光があちこちに散らばります。夕方は太陽の位置が私達の真上から横に移動し、太陽光が空気層を通る距離も長くなるので波長の短い青い光は届かず、昼はチリの間をすり抜けた赤い光も、大気中の分子にぶつかり散らばります。太陽光は大気中の分子にぶつかることで散乱し、青く 見えたり、赤く見えたりします が、光がどのように散乱するかは粒子の大きさで決まります。そこでサイエンスカフェ参加者の皆さんと散乱の実験を行いました。 白い絵の具、牛乳、入浴剤をそれぞれ水で薄め、同じくらいの透明度に調整し、透明なプラスチックコップの外側からライトを当てました。入浴剤のコップに当てられた光はオレンジに見えました。これは光に当たった入浴剤の中の粒子が光の波長に比べてとても小さかったため、「レイリー散乱」を起こしたためです。レイリー散乱により 波長の短い光ほど 強く散乱されるので、 白色光の中の青い光は強く散乱し、赤い光ほど光源から人の目に強く届くので、入浴剤の中の光はオレンジに見えたのです。 一方、白い絵の具と牛乳を入れたコップは白っぽく見えました。これは光に当たった粒子が光の波長と同程度以上の場合、白色光や太陽光はミー散乱を起こし、光の中のすべての波長が等しく散乱されるため、白く見えたのです。雲が白く見えるのは「ミー錯乱」のせいです。雲が黒く見える時は雲が分厚過ぎて太陽光が遮られているからです。

光の散乱実験
光の散乱実験

宍道湖の夕焼けというサイエンスカフェにお越しの松江市の皆様に身近なテーマだったので、積極的に実験に参加してくださり、大人の方も学生の方も、楽しんでいただけたようでした。

(記: 沖中)

謝辞

本イベントは島根県立松江北高等学校と共催で行い、同校の先生方、生徒の皆さんに多くのご協力をいただきました。厚くお礼申し上げます。

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