分光器作成中

島根県立松江北高校 出前授業

日時2009/11/13
場所島根県立松江北高等学校
対象理数科2年生95名
担当者高橋 藤貫 金澤 佐々木 山本 深瀬 藤原 鳥羽

内容

島根県立松江北高校において「総合学習」の時間に物理・生物・天文・航空の4分野からその道を志す大学生および大学院生が90分の授業を行いました。各授業は工作や実験を取り入れるなどして生徒さんに実際に手を動かしてなにかをさせるように工夫が凝らされており、生徒さんが普段なかなか知る機会がないであろう大学生活や研究室生活の話なども盛り込まれ、充実した内容となりました。また授業前には、代表の生徒さんが私たち講師やアシスタントがいる控え室まで来て、各講師にインタビューをしていました。そしてその情報をもとに、各教室にて授業の冒頭でその生徒さんたちから講師の紹介がされました。生徒さん自ら講師に会いに行き、短い時間で紹介内容をまとめ、実際に紹介するというスタイルに松江北高校さんの教育意識の高さを感じました。

以下に各講座の詳細を記していきます。

講義名:光で分かる世界の仕組み

講師:高橋安大(総合研究大学院大学)

「光で分かる世界の仕組み」というタイトルで、総合研究大学院大学 物理科学研究科 天文科学専攻の高橋安大さんが授業を行いました。主な授業内容は「分光器を使った分光実習」で、実際に生徒さんに分光器を作ってもらい、蛍光灯やナトリウムランプなど、いくつかの光源を分光することでどんなことが分かるのか、天文学での応用例なども盛り込んだ形で話しました。分光器の作成には手間がかかるけどキレイに分光できるであろう「応用編」からその作成難易度に合わせて、「標準編」、「基本編」と3通りの作成手順を先生は用意していたのですが、生徒さんは一番難しい「応用編」を全員選び、その意欲の高さに感心しました。実際、授業の多くの時間を工作に費やす結果となりましたが、完成した自分だけの分光器を片手に興味深そうにさまざまな光源を観察している生徒さんの様子が印象的でした。

授業後の生徒さんからのアンケートの中には、「自分で作ったからこそ、光の面白さが分かり、身近に感じた」「物理が今まで嫌いだったが、少し興味が湧いた」などの感想も寄せられ、有意義な授業になったのではないでしょうか。今回の授業が生徒さんの科学に対する意欲の向上のきっかけになれば幸いです。

分光で分かること
分光で分かること

講義名:恋する遺伝子~生きている不思議、死んでいく不思議~

講師:藤貫直子(慶應義塾大学)

「恋する遺伝子~生きている不思議、死んでいく不思議~」というタイトルで慶応義塾大学大学院 基礎理工学専攻 生命システム情報専修 の藤貫直子さんが授業を行いました。この授業では、我々が体の中に持っている生命の設計図、DNAを中心に、性と生殖に関わる遺伝子について話をしました。授業の前半には、藤貫さんが研究しているプラナリアを生徒が見る機会が設けられ、皆興味津々に見ていました。そして、小休止後、授業の中心となる、DNA抽出実験に入りました。

まず、実験に入る前に、DNAの説明をしました。ここでは、DNA に関する論文冒頭の英訳に挑戦してもらい、そこから今の自分とどれくらい距離があるのだろう、ということを実感してもらいました。そして、DNAについて少し分かったところで、抽出実験に挑戦してもらいました。実験の説明後、実験は、藤貫さんが前で実験の準備をして、生徒さんに手を動かしてもらうスタイルでした。実験結果を皆興味深く観察していたのが非常に印象的です。プラナリア観察や英語論文への挑戦、そしてDNA 抽出実験など、高校生にとって、大学生活を垣間見る好機となったのではないでしょうか。

恋する遺伝子
恋する遺伝子
DNA抽出実験
DNA抽出実験

講義名:紙飛行機から覗く最先端科学の現場

講師:金澤慧 (東北大学)

「紙飛行機から覗く最先端科学の現場」というタイトルで東北大学工学部 機械知能・航空工学科 の金澤慧さんが授業を行いました。私たちの頭上を飛んでいる飛行機の性能とはどのように決まっているのかについて、紙飛行機や映像を交えて生徒さん方にわかりやすく話しました。まずは簡単な自己紹介をしてから、翼の形に注目して飛行機の性能の違いを生徒さん方に伝えました。戦闘機や旅客機などを指して「どれが一番速くとびそう?」と尋ねると、生徒さん方は真剣に考えていました。

飛行機の性能の話のあとには、旅客機などと紙飛行機の性能を比較するために実際に紙飛行機を生徒さん方に作ってもらいました。翼の微調整を繰り返しながら遠くまで飛ばそうと、夢中で紙飛行機を飛ばしていた姿が印象的でした。測定した紙飛行機の性能と旅客機などを比較すると、旅客機の性能の高さに驚いていた様子でした。自分の手で作った紙飛行機と比較することで、実物の飛行機の性能を実感できたようです。最後に翼の設計手法として風洞実験とコンピュータシミュレーションを簡単な実演なども交えながら、長所短所などを話しました。そして実際の設計においては二つを上手く組み合わせること、最後は人が判断して設計するなど、工学としての難しさなどを伝えました。

金澤さんの授業風景
金澤さんの授業風景
紙飛行機に夢中
紙飛行機に夢中

講義名:惑星探しの旅へ

講師:佐々木彩奈 (茨城大学)

「惑星探しの旅へ」というタイトルで茨城大学理学部 物理学コースの佐々木彩奈さんが授業を行いました。この授業では、前半にて、宇宙の構造を紹介し、宇宙には星が非常にあることを触れたのち、もしかしたら地球のような星もあるかもしれないことを話しました。そして、通信ができるほどの文明社会を持つ惑星の数を見積もる式「ドレイク方程式」を説明し、実際に生徒さんに計算してもらいました。生徒さんたちはそのような式があることに驚いていましたし、また自分で考えた結果を生徒間で見せ合い、議論していました。

休憩後、系外惑星の探し方の説明にて、高校の授業で習うドップラー効果や惑星の食から探るなどを紹介しました。今年の夏に皆既日食もあったこともあり、生徒さんにとって身近に感じる点が多かったと思われます。最後に授業のまとめとして、系外惑星に関する研究の現状と、天文学だけではなく、「科学」自体への考えを紹介しました。生徒さんにとって、理科や物理を単なる勉強する科目として捉えるのではなく、新たな一面を考えさせられる好機になっていれば幸いです。授業後も、佐々木さんに熱心に質問している生徒さんたちの姿が非常に印象的です。

惑星探しの旅
惑星探しの旅
質問タイム
質問タイム

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