集合写真

銀河学校2008

日時2008/3/28 - 31
場所東京大学木曽観測所
対象高校生25名
担当者宮田隆、三戸、猿楽、藤原、米田、橋本、大木、山本、青木、佐々木、金澤

第11回目の銀河学校が今年も木曽観測所にて開催されました。今年もとても好奇心に満ち溢れた元気な高校生が沢山参加してくれました。毎年のことながら参加者の意欲は非常に高く、レベルの高い実習が高密度で行われていきます。では、3泊4日の銀河学校の報告をしたいと思います。

105cmシュミット望遠鏡見学
105cmシュミット望遠鏡見学

1日目

開校式が行われ、スタッフと参加者の間で自己紹介が行われました。初めての観測所に胸弾ませていたり、戸惑っているような顔がちらほら見られました。自己紹介をして打ち解けあうことが銀河学校を十分に楽しむ秘訣ですが、まだまだ緊張しているようです。その後、星の明るさと色についての講義と木曽105cmシュミット望遠鏡に関する講義がありました。この講義を始まりとして、天文学を学び始めます。そして、望遠鏡を見学しました。参加者は想像をしていたよりも巨大な望遠鏡を目の当たりにし、実際に触れることによって今後の実習への気持ちが高ぶっているようでした。そして、班ごとの活動が始まりました。

今年の銀河学校は、

  • A班 「小惑星を探れ」
  • B班 「死にゆく星の姿を探れ!」
  • C班 「銀河団をさぐれ!」

という3つのテーマで実習を行いました。

観測の様子
観測の様子

班内の活動では再び自己紹介が行われ班内の交流を深めます。そして、各班のテーマに即した概要を話していきました。また、その間に観測をして、画像処理などに関するお話も組み込まれていきました。1日目はまだ、これからどのように研究を進めていけばよいのか?という方向性を見出せるか分からないようですが、観測した写真を見て処理をするなど研究への1歩を踏み出しました。

また、今回は途中雪が降るなどの天候の影響によりA班は予備観測時のデータを用いましたが、各班一通り観測を行うことができました。

銀河団の測光中
銀河団の測光中

2日目

朝夕の宇宙の広さ・構造の講義と発表会に向けての講義、昼過ぎの中間発表以外は解析を1日続けました。以下に各班の実習の具体的な内容と様子を書きます。

A班では時間をおいて観測した同じ天域の画像2枚を交互に表示し、背景の星に対して移動している天体(小惑星)を探しました。そして、その明るさ等から大きさや軌道長半径などを導き出しました。班員は小惑星を見つけるために目が回りそうになりながらも手分けして探したり、小惑星の軌道を求めるためのホワイトボード三枚にわたる長い計算に必死に食らいていました。研究が進むにつれて、はじめは乗り気じゃなかった子や新高1ということで履修範囲にギャップがあり苦しそうにしていた子が、時間を追うごとに目を輝かせていました。

B班では星の死んだ後の姿である惑星状星雲と超新星残骸の二種類の天体を観測しました。Ha画像の天体の大きさと天体までの距離のデータから、天体の実際の大きさを求めました。そして、惑星状星雲と超新星残骸のガスの広がる速度をそれぞれ仮定し、大きさと膨張速度から星が死んでからの年齢を求めました。次に、マカリでそれぞれの天体を測光し、天体の3D構造を考えました。計算結果を班内で見比べ、「こっちの方が大きい!」や、「若い!」などの意見を言い合い、どんどん考察をしていく高校生たちの姿が見られました。考察をする過程で、3D構造を実際に作成するなどの工夫もしていました。仮説をたて、それについて真剣に議論をしている姿がとても印象的でした。最初はなかなか意見がでない雰囲気がありましたが、最後には班の皆が意見を出し合えていてとても良かったです。

C班では銀河団の性質について調べました。まずは、銀河団の写真を星と銀河をメモしながらひたすら明るさを調べました。この時、1つの天体につき4種類のフィルターの写真でそれぞれ200~300個ほどの同じ星や銀河を測光しました。そして、星と銀河、渦巻銀河と楕円銀河の色の違いについてのグラフを作成しました。ものすごい数の銀河や星を測光しグラフにする作業には頭がいっぱいになったようです。そして膨大なグラフから銀河と星、渦巻銀河と楕円銀河の特徴や性質を考察していきました。予想していた結果と見比べて頷く姿や首をひねる姿が非常に印象深かったです。

発表に向けての議論
発表に向けての議論

この解析の作業は、天文学を実体験していて、参加者が一番印象に残る場面です。ほんの数日前までに考えもしなかった事柄について真剣に1日中解析をして悩んで議論していくという過程はかけがえの無い経験となるのではないでしょうか。また、班内でのコミュニケーションも徐々にとれ、仲間意識も芽生えてくるようです。また、スタッフやTA、班員に盛んに質問をして必死に理解していこう!解明しよう!という意気込みがどの参加者にもみられました。どの班も、明日の発表会に向け一生懸命時間いっぱい研究をしていました。

グラフを考察中
グラフを考察中

3日目

午後の発表会に向けての準備が進んでいきました。発表のためにデータをまとめたり、まだ解析し切れていないデータを解析したり、どのように考察をまとめるべきか?について熱く議論を交わしていると直ぐに時間が過ぎていきました。特に発表資料をまとめる段階になると班内のわだかまりも一切無く1つの目標に向かって進んでいきました。また、3日間で学んだことの多さに驚き、内容を分かりやすく喋ることの難しさにも気づいていたようです。発表会では、20分間の発表をし、その後質問が行われました。スタッフとTAの質問に的確に答えられる場合も多かったのですが、議論が巻き起こる質問もあり盛り上がりました。どの質問にもしっかりと答えている姿勢はとてもすばらしかったです。発表を通じてさらに研究への理解が進んだのではないでしょうか。

発表会の後は夕食会とTAの発表会です。大学生/大学院生の自己紹介や学校の様子を伝える会ですが、どのTAも面白い発表ばかりでこれまでの実習の緊張感から開放された分だけ楽しめたのではないかと思います。また、その後はスタッフやTAが企画した様々な企画に参加したり、それぞれで語り合ったりと最後の夜を他の班員との交流を図っていました。残念ながら、雪が降ってしまい観望会はできませんでした。

発表の様子
発表の様子

4日目

さてさて長いようで短い銀河学校も今日でおしまいです。終了式で修了証をもらった後に小林副所長の科学者についての講義がありました。これまで研究を行ってきた総まとめとして科学をすることについて考えるきっかけになったのではないでしょうか。その後、雪帽子を被ったドームの前で記念写真を取りました。3日前のたどたどしさは全く無く、和気藹々と写真を撮っている姿は銀河学校の充実度を指し示しているようでした。

また銀河学校が終わったあとに、「とても楽しかった」「解析作業が大変だったけどまたやりたい」と言ってくれた生徒が何人もいて、非常に嬉しく思いました。また、この経験がこれからの高校生活や進路決定に少しでも役に立ってくれたらと思います。

終了式
終了式

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