星の教室

日時2006/12/9 - 10
場所東京大学木曽観測所
対象飯田高等学校の生徒 40名
担当者宮田(英)、藤貫

概要

12/9~12/10に木曽観測所で実施されました、星の教室2006について報告します。

講師として東京大学の小林さん・宮田(隆)さん・青木さん・亀谷さんが参加し、SSからは、アシスタントとして藤貫、宮田(英)が参加しました。

今回の星の教室は、長野県立飯田高等学校(理数系クラスの1年生)の皆さん40名を対象に行われ、飯田高校の先生方2人も一緒に参加されました。またその他に、星の教室を取材されにテレビ取材の方が8名来られ、その他JSTから視察の方も見えました。

以下に前日からの流れを書いていきたいと思います。

前日

アシスタントを担当した、藤貫さんと私宮田(英)は、前日18:00に木曽観測所に到着しました。すぐに、小林さん、青木さん、宮田(隆)さんと星の教室の冊子を読み合わせた後、担当である実習1実習2のパワーポイントの確認・練習を行いました。この時からすでに、テレビ取材が始まっており、緊張しました。インタビューも受けました。その時、指摘を受けた点について夕食後、藤貫さんと私でパワーポイントについて色々いじりながら練習しました。

星の教室の様子

(1日目)

パワーポイントを用いた実習の練習は、初日の午前中にも行いました。その後、昼食時には亀谷さんも合流されました。そこで昼食を食べながらもう一度簡単な打ち合わせを行い、到着を待ちました。

飯田高校の皆さんは定時での到着でした。一度、各自の部屋へ荷物を運び込んでもらった後、実習室ですぐに開会式、最初の講義がありました。開校式では、小林さんから挨拶があったあと、スタッフの自己紹介、諸注意、実習概要の簡単な説明がなされました。亀谷さんによる最初の講義では、宇宙のスケールの大きさを軸に、銀河と系内天体の違いが話されました。また、MITAKAを使ったシミュレーションも行われ、生徒の方々からは歓声があがる場面も見られました。

小休止の後、「視角を使って距離を測る」と題して藤貫さんが担当された実習1にうつりました。ここから先の実習は班毎に行いました。藤貫さんから視角について概要が説明された後、小雨の舞う天気ではありましたが各班順番に外へ出ての実験が行われました。実験では、まずポールを持って写真を撮り、ポールまでの距離とポールの長さから写真上の視角を決定し、その後生徒の皆さんの写真を撮り、人の身長と先に求めた視角によって、人までの距離が求められることを確かめました。生徒の皆さんは、最初、視角という概念に戸惑っていたようでしたが、実験を通してなんとなくわかったようでした。実験では各班によって差がありましたが、協力して行われていました。

実習1は予定よりも早く終わりその後、望遠鏡見学をしました。生徒の中には見た瞬間、その大きさに興奮をしている人も見受けられました。生徒の皆さんは2グループに分かれ、それぞれ宮田(隆)さんと青木さんから、シュミット望遠鏡の光学的機構について、望遠鏡やドームを動かしての説明を受けました。ドームが動いたり、鏡筒の中を覗いたりするたびに歓声があがっていました。

夕食の後、実習2及び実習3を行いました。実習2では、私宮田(英)が実習1で用いた原理が、銀河と天体写真にも応用できることを説明しました。その後、銀河の大きさとして銀河系の大きさ0.03Mpcを仮定し、それとコンピュータから選んだ銀河の画像の視角によって銀河までの距離を求めてもらいました。引き続いて実習3にうつりました。宮田(隆)さんから、銀河の後退速度をコンピュータで調べ、距離と後退速度に関するグラフを作り、そこから宇宙の年齢・膨張が示すよう指示がありました。どの班も、グラフでの線の引き方、得られたグラフがなぜ宇宙の年齢・膨張を説明できるのか、悩んでいるようでした。私たちは、各班の間を回りながら話を聞いたり、こちらから本当にそれで説明できるのかと質問をしたりしました。

22時になったところで、初日の実習はひとまず終わりになりました。その後、生徒の皆さんは部屋に戻ったり、トランプをしたりとそれぞれに過ごしていましたが、議論の続きをしている人(班)が多かったことがとても印象的でした。

24時になった頃、昼間は小雨が舞っていた天候が回復し、雲間から月が出ていました。そこで、青木さん、宮田(隆)さんと私で、観望会がすることができました。観望会ができたことは、本当に良かったと思いました。最終的にはオリオン大星雲・プレアデス星団といった天体を生徒の皆さんと一緒に見ることができました。驚いたことは、生徒の皆さんの議論への熱中ぶりで、観望会ができたと安堵していた折、「星よりも宇宙の年齢!!」と、すぐに講義室へ引き上げていく姿にはびっくりでした。宮田(隆)さんも「こんなこと今までなかったよ」と驚いたようでした。どうやら、夜おそくなっても盛んに議論をしている班もあったということです。2時間しか寝ていないという生徒もいたそうです。

(2日目)

朝8:30から発表の仕方・コツについて、宮田(隆)さんから説明があった後、OHPシートへの記入へとうつっていきました。とは言え、まだ結論が出ていない班がほとんどだったので、OHPの準備よりは議論が活発に行われていました。前夜からの疲れも目立っていました。結果として、準備時間は10分間延長されました。
引き続いて発表会を行いました。それぞれの班で宇宙の年齢が発表され、風船・年輪に例えた宇宙像などが挙げられました。準備時間が10分間長くなったとは言え、ほとんど班で、発表練習はあまり行われない状況でしたが、見ていてどの班も発表がうまいことに驚きました。図や時には自分達が近くや遠くの銀河になって説明をしていました。質問は、皆さんが悩んでいた距離と後退速度に関するグラフの線の引き方や、宇宙の年齢の誤差、銀河の選び方、宇宙像について出されましたが、生徒からの質問が出なかったことは残念でした。

その後、亀谷さんによるまとめの講義がありました。生徒の皆さんは、自分達の思い描いていた宇宙の姿と違っていた人もおり、興味深いようでした。短いものでしたが、わかりやすかったと思いました。宇宙の中心については、質問が出ていました。しかし、疲れを隠せない様子でもありました。続いて閉校式が行われ、班ごとに求めた宇宙の年齢が書かれた修了証書が、小林さんから授与されました。

生徒の皆さんと共に昼食を食べた後、荷物をバスへ運んでもらい帰所となりました。帰所にあたり、望遠鏡の前まで歩いてもらい記念撮影をしました。2日目は天気がよく、天文台の外壁がキラキラと光っていて綺麗だと思いました。帰るとき、生徒の皆さんから御礼の言葉がありうれしく思いました。

その後行われた反省会では以下のようなことがあげられました。箇条書きに挙げておきます。

  • 望遠鏡の見学の際の、反応が良かった。
  • MITAKAの評判が大変良かった。
  • テレビ取材について。生徒の皆さんへの影響を心配していたが、これについては特に問題はなかったようで、どちらかと言えば、スタッフの方が気疲れしてしまった。
  • 生徒が40名と大変多かったことについて。これについては、スタッフがどれか1つの班に付きっ切りになることができなかったことが問題であったという反省がなされた。それは、実習3において生徒の皆さんが議論に行き詰ったりして、何かしらのアドバイスが必要と思われるような場面にスタッフが出会っても、それまでの議論が把握できていないためにより良い対応ができなかったということである。
  • 発表の時に生徒からの質問が出なかったことについては、
    • はじめの班の発表の時にもう少し待って、スタッフが質問する流れを阻止すべきだった
    • 学校による差があるので仕方がなかった
    • 取材の影響
    などが挙げられた。
  • 今回の星の教室全体として、大きな事件もなくスムーズに終了することができたが、これについては、事前の打ち合わせが十分になされたためとの意見が出た。

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