実習1での実験。「どこに立とうかな…。」

星の教室

日時2006/9/9 - 10
場所東京大学木曽観測所
対象野沢北高校の生徒 38名
担当者富田、中谷、藤貫

9月9日から10日にかけて一泊二日の日程で星の教室が開催され、野沢北高校から生徒38名、教員2名が参加しました。今回の星の教室は『宇宙の年齢を求めよう』というプログラム。2つの講義と3つの実習などから構成され、生徒は天文学の考え方を学びながら、それぞれの力で宇宙の年齢を算出していきます。

一日目

観測所に来所し、開校式を終えた後は実習を始めるにあたっての講義が行われました。宇宙に関心を持ってもらうため、宇宙の構造や銀河とは何か、という説明が行われます。次に構内見学。実際に観測で用いられるシュミット望遠鏡を間近で見て、望遠鏡の仕組みの説明を受けたり、ドームが動く姿を見るのは、生徒にとっては初めての体験で、興奮したり興味を持って質問したりする様子が見受けられました。

構内見学、ドーム前での集合写真。熊出没注意の看板と一緒に。
構内見学、ドーム前での集合写真。熊出没注意の看板と一緒に。

次に実習に移っていきます。実習1『視角をつかって距離を測る』では、実験を交えて視角について学びました。長さの分かっている物体の視角を測れば、その物体までの距離が求められることを学習し、またデジタルカメラ、ポール、巻尺を使った実験で写真上の1cmあたりの視角とそれぞれの身長を使って視角距離を求める作業を行いました。実習2『銀河までの距離を求める』では、コンピュータで銀河の画像データベースを利用して、実習1で学んだ考えから銀河までの距離を計算により求めます。銀河を選び、画面上でのサイズから視角、銀河までの距離を計算しました。そして実習3『宇宙の年齢を求める』ではいよいよ、宇宙年齢の計算です。それぞれの銀河の後退速度と銀河までの距離をプロットし、宇宙の年齢について考えていきます。実習で使ったデータだけから考察するのですが、「ビッグバンがあったから…」と初めから知っている知識と結び付けようとする意見、また「このデータからだけでは求められないのでは?」とする意見なども出て、なかなか考えがまとまりません。班内で活発な意見交換が行われ、「宇宙の始まりはどうなっていたのか?」を考え始めると、「宇宙って、何!」や「宇宙の果てはどうなっているの?」とそれぞれが宇宙の謎解きに熱中していきました。

実習1での実験。「どこに立とうかな…。」
実習1での実験。「どこに立とうかな…。」

二日目

翌日は、一日目に学び考えた内容を発表に向けてまとめていきます。発表の仕方を教わった後は、班で役割分担をし、OHPシートの作成など発表への準備を進めていきます。質疑応答の時間があることを伝えると、発表に隙がないよう準備にも熱が入った様子でした。

実習3。発表に向けて宇宙の年齢を考察していきます。
実習3。発表に向けて宇宙の年齢を考察していきます。

昼前の発表会では一人一人が役割を持ち、班ごとに考えた宇宙年齢とその理由を発表します。各班、モデルや比喩を使うなど工夫を凝らした発表が見られました。発表会の後はまとめの講義を聞いて、閉校式を終えて解散です。

ちなみに今回、一日目の夜には残念ながら晴れ間は見えず、観望会は行われずに観測用の望遠鏡の解説のみとなりました。しかし望遠鏡が星に向かって自動照準する様子に歓声を上げたり、その分深夜まで議論が続いたりと、それぞれが熱心に活動していたのが印象的でした。実習に関しては、約80年前に天文学者ハッブルが同じような作業をして法則を見出したことを知ると、意義が深まり、感心した様子でした。高校生にとって、日常を離れ宇宙について思いを巡らす一泊二日は貴重な体験だったのではないでしょうか。今回、観測所という実際の研究の現場で生のサイエンスに触れたことが、今後より親しむきっかけになってもらえばと思います。

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