講義の様子

島根県立松江北高校出前授業

日時2006/10/20 14:10-15:50
場所島根県立松江北高校
対象理数科2年生 計168名
担当者竹沢、山崎、織田、橋本、大谷、岡島、三戸、藤貫、藤原

概要

先月に引き続き、再び、島根県立松江北高校の「総合学習」の中で、5つ講座を開講しまし た。今回開講した 講座は以下の通りです。

講座1 「分子でナノマシンをつくりたい」

竹沢悠典(東京大学大学院理学系研究科化学専攻 博士課程2年)

原子や分子を思い通りに操りたい。これは昔からの化学者の夢でした。分子はおよそナノ メートル(nm, 10億 分の1m)の大きさなので、これらを組み合わせて機械のように動いたり働い たりする”ナノマシン”を作るこ とができるのではないかと考えられています。今までの研究 で、複雑な形の分子や、動く分子を作ることが できるようになっています。 授業では、はじめに分子を合成するとはどういうことかを説明し、最先端の研 究も交えつ つ、「分子でナノマシンは作れるか?」という壮大な化学者の夢について話をしました。化学 を 学び始めたばかりの高校生には難しい話だったと思いますが、みんな熱心に聞いてくれまし た。

講座2 「世界は何からできているか?」

講師:山崎詩郎(東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 博士課程3年)

身の回りのものはすべてとても小さな粒子、『原子』からできています。原子はもっと小さ い『電子』と『原 子核』からできています。では、原子核は…?結局、世界を作る最も小さい 粒子はいったいなんなのでしょう か?この問いに答えるためにミクロの世界への旅に出かけま した。小さな世界に行くほど高校生の興味が徐々 に上がっていったようです。旅は『クォーク』と呼ばれる超極小の粒子にたどり着きました。そこで繰り広げ られる『カ ラーの閉じ込め』といった常識の通用しない奇妙な現象を、身近な例やアニメーションを用 いて わかりやすく話しました。

講座3 「Supernova!」

講師:織田岳志(京都大学理学研究科宇宙物理学教室 博士課程2年)

授業の前半は星の一生を解説しながら、超新星というのは星の最期の瞬間におこる爆発現象 であるというこ とを解説しました。授業の後半では、超新星に関連した最新の天文学というこ とで、超新星爆発で距離を測 り、宇宙の進化を探るという話をしました。また余興として、す ばる望遠鏡でとった画像を使って実際に超 新星を探してもらいました。この余興は非常に盛り 上がりました。

講座4 「科学と魔法は紙一重!?」

講師:橋本淳(東京理科大学大学院理学研究科物理学専攻 修士2年)
講師:大谷陽祐(東京大学大学院理学系研究科化学専攻 修士課程2年)

高度化された科学は魔法と見分けがつかない、どなたが仰ったのか覚えていませんが、かつ てそのように言 われたことがありました。確かに現在では当たり前に使っているテレビや携帯 電話は1000年前の人が見れば まさに魔法そのものと言えるでしょう。しかし、科学は魔法では ありません。テレビにしろ携帯電話にしろ、 それらの原理はきちんと説明ができるのです。で すが、それを実際に説明するには科学的な知識が必要なの はもちろんのこと、そもそもまずは 目の前の現象について疑問を持たなければ始まりません。そして検証す ることが必要です。授業では、偏光観測による最先端の天文学を紹介し、講義の目的である、「疑問を持って 欲 しい」との願いから、大小の偏光板を用いた「偏光」に関する実習を行ない、さらに人間の目 にも「偏光」 を感じることができるということを実感してもらいました。生徒さんには今後、実習の中で実習で体験した様々 な不思議をよく考え、それらの謎を解い ていってほしいと思います。

講座5 「このお金で何が見えるかな  ~天文学とお金~」

講師:岡島礼奈(東京大学大学院理学系研究科天文学専攻 博士課程2年)

今年のノーベル物理学賞の話を導入に、天文学者ときいてどんなイメージだろう。毎日夜空 を見上げている 浮世離れしたロマンチストだというイメージがよくかたられますが、そんなこ とないということを話しまし た。天文学って大きく何をしているか、から始まり、天文学に使 われている税金、天文学(基礎科学)って 一体なんの役に立つの?などを、科学と社会の関わ りをまじえて話しました。理系の政治家、官僚がいない など、日本の問題を話したあたり、皆 熱心にきいていました。(聞いてくれていたはず)